明日を探る
第3部 変わる働く環境
第3部 変わる働く環境
わ(5)外国人パワー 日本の重労働肩代り | |
(2005/05/04) | |
二〇〇二年十二月、■(台にコザト)振華さん(30)は、中国遼寧省に生まれたばかりの娘を残し、研修生として日本にやって来た。下田町の農業生産法人・柏崎青果で働いている。夫や娘と別れるのはつらかったが、日本に行くチャンスは二度と巡ってこないかもしれなかった。
「日本での稼ぎは夫の五倍はある。三年の研修期間を終えて中国へ帰れば、家を建てられるし、娘の学費もできる。農業技術や語学も身に付く」
中国へは一度も帰っていない。時々、電話越しに娘の声を聞くだけ。
日本は大好きだ。「景色がきれいだし、みんな優しい。できればずっといたい」。ただ、家族にも早く会いたい。
十二月には帰国し、三歳になった娘を、ようやくその手に抱ける。
■担い手不足
「畑に出る人がいない。まずいぞ」。農作物の生産から加工、販売まで一貫して手掛ける柏崎青果社長の柏崎進一さん(57)がそう気付いたのは、七年ほど前のことだ。
関連会社を含め約九十人の従業員のうち、高齢者が大半を占めるようになった。加工はいいが、畑での力仕事は無理だ。
公共職業安定所に求人を出すものの、若者は農作業を敬遠した。たまに採用してみても、定着はしなかった。「いくら求人倍率が低くても、農業をやる若者はいない」
少子高齢化による労働力の不足が、雇用型農業の場に真っ先に表れた。
そんな時に知ったのが、中国人の研修生受け入れ事業だった。中国人が技術と語学の向上を目的に、日本で働きながら研修する制度。日本側には、技術者や労働力を補充できるメリットがある。
柏崎さんは三年前、研修生の受け入れ組織として、看板店や工務店など下田町内の六社で「木崎野中小企業協同組合」を設立。現在、約二十人を受け入れている。
■割高な人件費
外国人だからといって、人件費としては必ずしも安くはない。柏崎青果の場合、研修生の寮を新設したし、光熱費も一部負担している。渡航費もかかる。柏崎さんは「安い労働力という意識では、絶対に失敗する。日本人より割高だが、若くてまじめな力が手に入る。それが何よりもありがたい」と強調する。
「この先、日本の労働人口は絶対に足りなくなる。農業は一歩先を行っているだけ。ほかの産業でも、労働力の需給ギャップを埋めるのは、外国人かもしれない」
夫、息子を残してきた山東省出身の■(赤にコザト)■(麻垂に大)紅さん(29)。中国の実家ではキャベツやトウモロコシ、スイカを作っている。「日本の農業技術は優れている。帰国したら、学んだ技術を生かして、どんどんいい物を作るよ」。■(赤にコザト)さんの笑顔がはじけた。
海を越え、家族と離れて暮らす彼女たちが、貪欲(どんよく)に技術を吸収しながら、農業の一端を支えている。日本人が嫌う重労働。明日を担うのは一体、誰になるのだろう。
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